自粛生活が続き、以前にも増して自炊する機会が増えたことだろう。そんな中、4月10日に消費者庁が、「新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について」と題した通知を出している。
これは、新型コロナウイルスの影響で原材料が不足し、別の産地のものを使わざるを得なくなっても、容器包装の成分表示を変更せずに販売してもよい、というもの。
表示を切り替えなくてもよいとされる対象は、基本的には【食品原材料】と【添加物】だ。しかし、やむを得ない場合は【原料原産地】【製造所の所在地】【加工所の所在地】【栄養成分の量】が変更されてもそのままの表示で許される。要は、国産だった原材料が輸入品に変わったとしても、表記は「国産」のままでOKということになる。
消費者庁は、今回の通知を悪用する違反に対して厳しく取り締まっていくことも併記しているが、悪用の定義は曖昧だ。もしこの通知を悪用して、原材料や原産地を偽装されてしまったら、どのようなリスクが起こる可能性があるのだろうか。
気がつかないうちに低品質な食品を口に
今回の食品表示ルールを制定した消費者庁の、食品表示一元化検討会委員を務めたこともある薬学博士の中村幹雄さんは、憤りを隠さない。
「原料原産地、原産国は、“食の安全”に欠かせない大事な情報です。それを変更しても表示はそのままでよいとなれば、消費者の選択する権利が脅かされていることになる。これは大きな問題です」
仕入れ先が変更されても消費者がそれを把握することができなければ、過去に判明しているリスクのある食材が使用されるかもしれないと、中村さんが語る。その一例がえびだ。
「2010年にベトナム産の冷凍養殖えびからトリフルラリンが検出されたことがあります。トリフルラリンは、藻の除去に使用される除草剤で、食品衛生法によって設けられている基準値を超えていた。この基準値についても、2013年に厚生労働省が緩和してしまっています。つまり、除草剤が残留したえびを口にするリスクがある。ベトナム産のえびは国内市場に多く出回っていますが、私は避けています。けれど、今回の通知によって、そのような選択ができなくなるということなんです」(前出・中村幹雄さん)
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