民主党のオバマ前大統領も激戦州入りし、期日前投票を有権者に呼びかけた(21日、ペンシルベニア州)=AP
【ワシントン=永沢毅】米大統領選の期日前投票が2016年と比べて4倍以上のペースで増えている。新型コロナウイルス対策で郵便投票が急増しているためだ。党派別では民主党の割合が多いが、共和党支持者は多くは投開票日に投票するとみられる。期日前投票の急増で結果判明が大幅に遅れる可能性があり、大統領選の波乱要因になりそうだ。
21日までに期日前投票を済ませた有権者は4300万人を超えた。集計しているフロリダ大の研究者のサイトによると、18日までの時点での比較では16年と比べて4.7倍。郵便投票が約3100万票、投票所で直接投票したのは約1190万票にのぼる。
大幅増は新型コロナの感染拡大で各州が郵便投票を使いやすくしたのが主因だ。従来は病気や仕事などやむを得ない明確な理由が必要だったが、今回は大半の州が感染防止のために基準を緩めた。9州と首都ワシントンはすべての有権者に自動的に投票用紙を送る仕組みをとる。
期日前投票をした有権者を党派別でみると、民主党員として登録している有権者が52%、共和党が26%となった。民主党のバイデン前副大統領が郵便投票の利用を奨励していることもあり、民主党が圧倒している。
激戦州の南部フロリダ(民主46%、共和33%)や同ノースカロライナ(民主43%、共和27%)でも差は鮮明だ。東部ペンシルベニアは民主が71%に及び、共和の19%を圧倒する。「前回は多くの有権者が投票に行かなかった。繰り返してはならない」。民主党のオバマ前大統領は21日、ペンシルベニアで初のバイデン氏の応援演説に臨み、早期投票を促した。
調査会社ギャラップによると、郵便投票を含む期日前投票はこれまで党派による差異はなかった。今回は民主党支持者の62%が期日前投票を予定すると答え、共和党は28%にとどまる。トランプ大統領が郵便投票を批判しているのが影響しており、断絶が横たわる。
共和党支持者の多くは11月3日の投開票日に投票所に出向いて票を投じる割合が大きいとみられている。米紙ワシントン・ポストの世論調査では、トランプ氏支持者の58%、バイデン氏は39%が投開票日に投票すると答えた。期日前投票での民主党優位が必ずしもバイデン氏優位を意味するとは限らない。
例えば16年にトランプ氏が制したノースカロライナが典型例だ。民主党候補のクリントン元国務長官が期日前投票の得票率では2ポイント以上リードしていたが、投票日の得票率ではトランプ氏が16ポイント上回った。多くの米メディアは期日前投票を踏まえてクリントン氏の優勢を伝え、勝利の兆しがあると報じていた。
激戦州の支持率では、バイデン氏のリードは16年のクリントン氏とほぼ同じ水準にとどまる。政治サイト、リアル・クリア・ポリティクスがまとめる各種の世論調査の全米支持率では、フロリダやペンシルベニアなど最も注目されている6州ではバイデン氏は4.2ポイントのリードを保つ。クリントン氏は同時期に4.1ポイントのリードだったが、この6州ですべてトランプ氏に敗れた。
郵便投票を巡っては、投開票日の当日までの消印があれば数日後の到着分も有効票とみなす州も多い。開票当初は当日投票が多いトランプ氏の得票が先行し、時間を追ってバイデン氏の票が増える展開が予想される。接戦になれば郵便投票の結果を待たずに、トランプ氏が勝利宣言に踏み切る観測もあり、混乱が懸念される。
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