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Saturday, September 5, 2020

PC版『Horizon Zero Dawn』の移植品質から考えるPCゲームのメリット・デメリット - IGN JAPAN

『Horizon Zero Dawn』はSFアクションRPGの超大作だ。ステルスアクションとオープンフィールドが合致した、スリリングなハンティング。素朴な狩猟生活や部族衝突と対を成す、古代科学文明のディティール。世界の破局に立ち向かう主人公アーロイのオリジン。それらで40時間弱のゲームプレイを中だるみなく飾りたてた。

恐竜型機械サンダージョーの討伐。世界創造の神話を秘めた古代遺跡の探検。驚きと発見に満ちた数々のアクティビティが、プレイ意欲をかきたてつづける。旅路の果てで胸に残るは、1000年後の地球という新世界の雄大さだ。

以上を筆者のレビュー要約とする。詳細なレビューはIGN本誌記事の翻訳を読まれたし。本稿は2020年8月7日に発売したPC版のインプレッションである(以下、ハード別にPC版・PS4版、総称は本作と記す)。先に印象を一行でまとめておこう。「PC版をプレイすると、PS5が欲しくなる」のだ。これにはしてやられた。

理由はふたつある。ひとつ目は続編『Horizon Forbidden West』だ。本作は地球滅亡の危機を救い大団円を迎えるが、無視できない禍根をいくつか残して幕を閉じる。続編アナウンス動画はその禍根をほのめかしたので、決着をつけるか楽しみだ。PC版でタイトルロゴをリデザインし、シリーズがどこにいきつくかも見どころだろう。

もうひとつは、残念だがネガティヴな印象に起因する。PC版は発売日に最高のスタートを切れなかった。クラッシュバグ。セーブデータの消失。低フレームレート。これら移植品質の低さに悩まされた。PS5の後方互換で本作と出会っていたなら、苦い思いをせずにすんだかもしれない。

とはいえ、PC版がPS4版からビジュアルを強化した点は加味に値する。次章よりPC版の追加要素と、フレームレートの測定結果を述べる。その上で移植品質を問題視しインプレッションの総括とする。

リマスター版Horizon

PC版の焦点は現代ゲーム水準へのリマスタリングである。プレイ体験、ストーリー体験はそのままだが、モデルディティールやテクスチャを強化したので、リマスター版と称しよう。また、PC版独自のビジュアル要素もある。内容は下記の3項となる。

  • ウルトラワイドモニター対応
  • フレームレート制限の解除
  • ダイナミックフォリッジ

先の2項で多様なゲーミングモニターに対応した。特に、フレームレート制限の解除は「これぞPCゲーム!」という印象だ。残るダイナミックフォリッジは、足元の草と低木が干渉オブジェクトに応じて動く機能である。自然な動きゆえ見逃しがちだが、生い茂る緑が模様以上の存在となった。

 

画質設定の項目は多岐にわたるが、4段階のプリセット設定で手軽に選べる。これと別に、4K解像度+HDR表示向けの設定が細かい。ひとつはアップサンプリングの動的調整だ。処理負荷に応じて内部処理の解像度を調節し、目標フレームレートを維持する。もうひとつはHDR設定で、ガンマ補正のように中間色とハイライトの明るさを調節できる。

 

上記で画質設定を取り上げたが、本作はPS4版の時点で十分以上の映像感動だ。機械獣と廃墟が自然と混在した、アーロイたちの世界は驚異に満ちている。加えて戦闘パートは激しく、細部に目をこらすのは難しい。手っ取り早くPC版の恩恵を味わうなら、フレームレートを優先しよう。正確には、フレームレートを優先しないとプレイ体験に支障をきたす。

とにかく遅い

フレームレート制限の解除で得られる恩恵は、プレイヤーのPC性能に左右する。Steamストアページ掲載のメーカー推奨環境は、PS4 Proの性能を若干上回る程度だ。だからPS4版とフレームレートを比較すれば、本作がPC版でどれだけチューニングをほどこしたか測りやすい。推奨環境に近い筆者PCで、実プレイのフレームレートを測定する。

筆者PCのパーツモデルは次のとおり。AMD Ryzen 5 1600AMD Radeon RX 5500 XT、メモリ16GB。測定結果はフルHD解像度・フレームレート優先で60FPSだ。拡張DLC『凍てついた大地』の豪雪地帯は60FPSを下回るが、PS4から倍増しており恩恵を感じた。

フルHD解像度でパフォーマンス指標を表示した画面をカメラで撮影。左側が最低画質(ゲーム表記: パフォーマンス優先)で60FPS、右側が最高画質で42FPS。<br />
フルHD解像度でパフォーマンス指標を表示した画面をカメラで撮影。左側が最低画質(ゲーム表記: パフォーマンス優先)で60FPS、右側が最高画質で42FPS。

しかし、4K解像度では約26FPSと大きく落ち込む。PS4 Proのフレームレートを下回ったのは残念だ。画質をあげればフレームレートはみるみるさがり、4K解像度・最高画質では約16FPSとなる。メーカーの推奨環境は4K解像度のプレイに適さない。先の設定で60FPSを維持するには、「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」という高級GPUを要する(出展: YouTube - Bang4BuckPC Gamer)。映像美をウリにする近年のAAAタイトルと比べても、画像処理の負荷が高すぎる。

4K解像度で先と同条件。左側が最低画質で28FPS。右側が最高画質で17FPS。<br />
4K解像度で先と同条件。左側が最低画質で28FPS。右側が最高画質で17FPS。

これは本作がPS4 Proで4K解像度・30FPSを想定して開発したからである。PC版はそのままモデルディティールやテクスチャを高解像度化した。当然、処理負荷は高くなる。処理負荷を軽減しようにも、オブジェクト数を減らせば劣化移植だと揶揄されよう。こうしてフレームレートは犠牲となった。

メーカーも一部環境でのフレームレート低下を問題としている。そのうち良くなるかもしれないが、ユーザーがゲームにあわせてGPUを買い換えたほうが早いだろう。ちょうど9月17日に新しい高級GPU「NDIVIA GeForce RTX 3080」が発売する。これなら大丈夫そうだが、次章を読んでから購入を検討してほしい。

チューンアップのコストは君が払うのだ

PCゲームシーンとは自らフレームレートを求める“自求自速”の世界である。いまのフレームレートが不満ならば、高級GPUを買うか、我慢するかだ。しかし、この考えで折り合いがつくのは、ゲームが問題ないときに限る。PC版は品質保証レベルの不具合があり、低フレームレートを擁護できない。

Steam掲示板に投稿された不具合報告は数多い。そのなかで致命的なバグが3つもある。ゲーム起動失敗。クラッシュバグ。セーブデータ消失。これらで発売日に購入したユーザーの印象を損ねた。なお、8月19日配布のバージョン1.02で改善した。これからプレイするゲーマーは安心されたし。

GPU変更またはドライバ更新後の初回起動時、グラフィック最適化の処理がはいる。筆者PCで18分30秒要した。<br />
GPU変更またはドライバ更新後の初回起動時、グラフィック最適化の処理がはいる。筆者PCで18分30秒要した。

先のバグと比べて軽度だが不具合は他にもある。ゲーム初回起動時に10分以上かかるグラフィック最適化処理。モデルデータ読み込みミスのローポリ化。アップサンプリング時の四角ノイズ。テクスチャのちらつき。これらは本作のプレイ体験・ストーリー体験を傷つけるものではない。しかしPC版はビデオ体験のリマスタリングが焦点ゆえ、落ち度である。

以上の不具合は、本作と同じゲームエンジン「DECIMA」で開発した『DEATH STRANDING』のPC版にはなかった。その上で、GPU側のアップサンプリング機能「AMD FidelityFX CAS and Upsampling」、「NVIDIA DLSS 2.0」にも対応している。移植品質の差は歴然だ。比較検証をもって品質保証テストの不足だと指摘する。ハード・モニター性能がユーザーごとにちがうため、PCゲームの品質保証は難しいのはわかる。それでも、メーカー推奨環境と高級GPUは品質を保証してほしかった。

 

おもしろいのは、ゲーマー側のハード性能を統一していれば、この問題を防ぎやすいという点だ。独占タイトルはハード性能が同じだから、メーカーは発売日前の品質保証を念入りにできる。ゲーマーは安心して発売日に購入できよう。PC版の移植品質が、皮肉にも独占タイトルの長所を示唆してしまった。これが「PS5が欲しくなる」といった理由だ。

PS5の後方互換はプレイステーション公式ブログで「タイトルごとに細かな検証を行っています」と告知がある。ソニーがPC版の失敗を糧に、厳しく検証するよう祈ろう。前章で高級GPUの購入に待ったをかけたのは、PS5のハード性能が現行のハイエンド・ゲーミングPCに比肩するからである。ソニーの頑張り次第では、PSが『Horizon Zero Dawn』で最高の初体験を得るゲームハードになるかもしれない。

PS5の存在感が増した移植品質

ハイエンドPCに比肩するPS5の性能。発売日バージョンの不具合。ここにPCゲームの品質保証テストという難題が加われば、因果関係をむすびたくもなろう。その言いがかりは憶測の域を出ない陰謀論ゆえ、結果だけをもってインプレッションを締める。『Horizon Zero Dawn』のPC版は完璧な移植品質とはいえないが、現代ゲーム水準へのリマスタリングを果たした。4年前のSFアクションRPG超大作は、今年でもSFアクションRPG超大作である。

 

だが、あえて告げよう。筆者はPC版のプレイを通じPS5の存在を強く感じた。一番の要因は続編『Horizon Forbidden West』がPS5で発売するからだ。お気に入りタイトルの続編が出るというシンプルな理由だが、これほどそそるものはない。

はっきりいえば、PS5のハード性能自体には魅力を感じていないのだ。それにPCゲームシーンには、インディー開発、パッチ更新、メーカー公式フォーラム、日本語化MODといった自由がある。いまさらハードメーカーに縛られるなんて馬鹿馬鹿しい―― そう考えていたが、本作の出来映えにはほほをひっぱたかれた。4年も前にこんなすごいゲームが出ていたなんて! と驚かされた。

ソニーがファーストパーティタイトルのPC移植を検討しているのは、独占タイトルを通じてPS5をアピールする目論見かもしれない。少なくとも筆者には成功した。PS5の後方互換品質・発売日・価格がわからないので決めかねているが…… いずれにせよ『Horizon Forbidden West』はプレイする。PC版か、PS5版で。

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September 06, 2020 at 08:52AM
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